【特別企画】
「海と生きるための言葉~青いエンジンと人類の関係を問い直す」
管啓次郎×林真×中野真備
地球の表面積の約7割を占め、水の循環をつかさどる海。私たちは、たとえ海から遠く離れていても、全面的に海と関わって暮らしています。そして、人間活動が地球に深刻な影響を与えている現代において、世界に対する私たちの態度を再考するには、海との関係を問い直す必要があります。昨年11月に日本語訳が刊行されたヘレン・チェルスキーの著書『ブルー・マシン——海というエンジンと人類史』(エイアンドエフ)は、そのことを教えてくれる書物です。
この本でチェルスキーが強く訴えるのは、海について知ることを通じて「世界の見え方」(パースペクティヴ)を変える必要があるということです。そのためには海を描き出す「言葉」が間違いなく重要な役割を果たすでしょう。
この講座では、人類学や生態学などの幅広い知見を通じて言葉について考える詩人の管啓次郎さん、『ブルー・マシン』を翻訳した林真さん、インドネシアのサマ(バジャウ)の人々が海をどのように見ているかに言葉の側面から迫った著書『海を「視る」技術』(京都大学学術出版会)を今年刊行した中野真備さんをお招きして、海と私たちとの関係を改めて考えます。
祝!出版記念
ヘレン・チェルスキー (著), 林 真 (翻訳), 管 啓次郎 (解説) エイアンドエフ
『海を「視る」技術: インドネシア・バンガイ諸島サマ人の漁撈と環境認識』
管 啓次郎 Suga Keijiro
詩人・比較文学研究者、明治大学<総合芸術系>教授。専門領域は多言語モダニズム、エスノポエティクス。また文学と隣接分野(人類学、地理学、生物学、生態学など)の関係に関心を抱いてきた。『斜線の旅』(インスクリプト)により読売文学賞受賞。近著に『エレメンタル』(左右社)、『ヘテロトピア集』(コトニ社)など。ルクレジオ『歌の祭り』『ラガ』(いずれも岩波書店)をはじめ、翻訳書多数。
林 真 Hayashi Makoto
独立研究者、翻訳家。明治大学理工学研究科〈総合芸術系〉博士前期課程修了。訳書にヘレン・チェルスキー『ブルー・マシン——海というエンジンと人類史』(エイアンドエフ)、共訳書にポール・ジェプソン/ケイン・ブライズ『リワイルディング——生態学のラディカルな冒険』(管啓次郎との共訳、勁草書房)。京都芸術大学通信教育部非常勤講師。
中野 真備 Nakano Makibi
甲南女子大学人間科学部文化社会学科講師。流星・彗星の伝承および新潟県佐渡島のイカ漁における天文民俗の研究にはじまり、インドネシア島嶼部の海洋民サマ(バジャウ)の漁撈における環境認識について、ナヴィゲーションや民俗語彙に着目した研究を実施。2022年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士(地域研究)。主な著書に『海を「視る」技術—インドネシア・バンガイ諸島サマ人の漁撈と環境認識』(京都大学学術出版会 2025年)など。
概要