信じること、生きること~人間の弱さを見つめて
第2回「苦難の人生を生き延びる:弱さをめぐる対話を通して」
引土絵未×斉藤章佳
司会:島薗進
自ら傷つくとともに人を傷つけることを免れない。それが人間の条件なのかもしれませんが、そのことに苦しみ、立ち上がれないような困難にはまり込んでしまうこともあります。悪循環に陥ると容易にそこから脱することはできないものでしょう。家庭環境や生育環境からそのような負の連鎖を身につけてしまうこともあります。依存症、自死念慮者、さまざまな精神障害などをそのような側面から捉え返すこともできるでしょう。
では、どうしてそのような苦難の人生を生き延びていけるのでしょうか。このセミナーでは、そのような問いに関わって、支え合いの道を探ってきたおふたりのお話をうかがい、ともに考えていきたいと思います。
依存症者・加害者・受刑者が自らの経験と感情を振り返りながら、新たな気づきを得て生き延びていくための学びの場が育てられてきました。たとえば、米国のアミティがそのモデルで、映画『プリズン・サークル』で紹介されたものです。日本でも「治療共同体」(Therapeutic Community:TC)としてこのような場を育てていく試みがなされています。その動きに関わってこられた引土絵未先生に、自らの人生の歩みを省みながら、治療共同体がどのような意義をもつのかについてお話しいただきます。
また、アジア最大規模の依存症治療施設に長年勤務しながら、性依存症を含む性加害者の治療教育プログラム、あるいはコミュニティへの再統合支援の試みを続けてこられた斉藤章佳先生に、性の問題に耽溺する人々の苦難の人生について、また加害者として加害行為の責任に向き合い続けることの困難さについてうかがいます。加えて、そのような悪循環のなかから生きなおしていくために何が必要なのか、とりわけ自らの弱さを開示し認めることの力について、自らの経験を踏まえてお話しいただきます。
そして、お二人の間で、現代の苦難を生き延びるあり方について、また弱さを受け入れることの意義について、語り合っていただき、さらに参加者一同との語り合いの場を設けたいと思います。多くの方々のご参加をお待ちしています。
内容
講演① 引土絵未「弱さの先にある希望をめぐる場の力」
講演② 斉藤章佳「加害者が言葉の豊かさを獲得するということ」
対談(引土絵未×斉藤章佳)
鼎談(引土絵未×斉藤章佳×島薗進)
質疑応答
引土絵未 Hikitsuchi Emi
精神保健福祉士・社会福祉士/日本女子大学人間社会学部社会福祉学科専任講師。1976年生まれ。大学生時代にアルコール依存症の父親を自殺で亡くしたことを契機に、精神科病院にて精神保健福祉士として勤務。主にアルコール依存症からの回復支援に従事する。その後、同志社大学大学院博士後期課程修了(社会福祉学博士)。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部を経て、現職。治療共同体アミティでの生き直しの経験を通して、治療共同体の実践と研究に取り組む。主な著書に、『自殺をケアするということ』、『治療共同体実践ガイド』など。
斉藤章佳 Saito Akiyoshi
精神保健福祉士・社会福祉士/大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大卒後約20年にわたり、アジア最大規模といわれる依存症施設、榎本クリニックでアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性犯罪・児童虐待・DV・クレプトマニアなど様々なアディクション問題にソーシャルワーカーとして携わる。その後、2020年から現職。2500名以上の性犯罪者の治療に関わり、「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践・研究・啓発活動に取り組んでいる。主な著書に、『男が痴漢になる理由』、最新刊に『男尊女卑依存症社会』など著書多数。
島薗進 Shimazono Susumu
宗教学者/東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、大正大学客員教授。1948年生。東京大学大学院博士課程・単位取得退学。東京大学大学院人文社会系研究科・教授、上智大学大学院実践宗教学研究科・教授、上智大学グリーフケア研究所所長を経て、東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、上智大学グリーフケア研究所・客員所員、大正大学・客員教授。専門は近代日本宗教史、宗教理論、死生学、生命倫理。著書:『宗教学の名誉30』(ちくま新書、2008年)『国家神道と日本人』(岩波書店、2010年)、『日本人の死生観を読む』(朝日新聞出版、2012年)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日新聞出版、2019年)など。
概要
日程 2023年8月26日(土)
時間 14:00~17:00(開場13:30)
会場 大正大学4号館421教室
一般:2500円
会員:2000円
学生:1500円
会員学生:1000円
※この講座は終了しました
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